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木×仏像(きとぶつぞう)展:大阪市立美術館

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“飛鳥仏から円空へ―日本の木彫仏1000年”。彫刻技法、用材など“木”に焦点を当てた展覧会。「焼けた大仏殿の柱を用いた」地蔵菩薩立像(快成/奈良・春覚寺、1256)のように用材が特定できるのは貴重な事例なんですね。

7世紀、初期の飛鳥仏・菩薩立像(東博)の表情は、遠く埴輪を思わせます。8~9世紀、東大寺〈試みの大仏〉弥勒如来坐像は、さすが国宝の存在感。

木像ゆえ戦火で失われたものも多かったでしょう。戦乱から仏像を救出する絵巻の場面を思い出します。大阪から出品されている3体の地蔵菩薩立像は、応仁の乱の際に池に沈めて守られた(蓮花寺)、第二次大戦の戦火を免れた(三津寺)、隠岐の浜に流れ着き鴻池が奉納(和光寺)などのエピソードを伝えています。

造形の全体を知ってほしいというねらいから、どの仏像も四方から見ることができます。京博に寄託されている「宝誌和尚立像」の後ろ姿も拝むことができました。

表情もみな個性があります。ワタシは、滋賀・櫟野寺の観音菩薩立像にひかれました。腕は失われていますが、やや前傾した立ち姿が安定感を見せる定朝様の仏像です。また、滋賀・誓光寺の十一面観音菩薩立像の肩まで垂らした耳飾りのような垂髻もステキです。どちらも12世紀の平安仏。

55点、70体の仏像がみな、木から作られていることに驚きます。様々な造形を経て17世紀の円空仏を見ると、どこか違う世界に来たような気がしました。3分割したヒノキから彫り出した烏と狐の秋葉権現三尊像など。
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2階のコレクション展は4室。

【絵画と工芸】では〈木×美術〉をテーマに、山口華楊「風」、福田平八郎「桜」、小野竹喬「秋陽」など1943‐44年の絵画と、蒔絵の香合、短冊箱など。

紺紙金銀字交書が美しい延暦寺蔵「法華経」をはじめとする【奈良・平安の写経】

【丸山石根/西国三十三所観音御画像】は、青岸渡寺から六波羅蜜寺までの前半17面。

そして楽しく美しい【絵巻物撰】。

男装して宮廷に出仕した“新蔵人”が帝の寵愛を受けて男宮を生み、女性に戻ることなく出家を決意するという「新蔵人物語絵巻」。天地が11センチ弱の白描の小絵(小型絵巻)に引き込まれます。

室町期の作品では、狩野派の「二尊院縁起絵巻」や、対になった扇絵と和歌がいっぱいに描かれた「扇の草紙」。百人一首で知られる歌も見つけられます。江戸期に入ると「うつほ物語絵巻」や「十二類絵巻」「春日若宮祭礼絵巻」。

15~16世紀、大阪・長谷寺所蔵「長谷寺縁起」は、本尊十一面観音の造立の場面。用材を浄める御衣木加持(みそぎかじ)や、二人の仏師に化身した地蔵菩薩と不空羂索観音の活躍で(腕の動きの描写がスゴい!)3日で彫り上げます。〈木×仏像〉展にふさわしい展示ですね。


by nijinotami | 2017-04-27 06:20 | 美術館・博物館 | Comments(0)

美術館や博物館、コンサートや落語など、行きたいところはいっぱいあります。月に1度ぐらいは女装して出かけてます。


by 岡村ゆかり