堂本元次展〈こころに映ゆ〉
2016年 05月 28日
京都・衣笠の堂本印象美術館で、堂本元次の回顧展を見ました。堂本印象の兄の女婿、広島で被爆し原爆症に悩まされ続けた生涯、2010年に亡くなったこと、などのプロフィールを全く知らなかったワタシです。たしか竹橋の近代美術館で大きな作品を見たような記憶があります。
作品はみな思ったより大きくて、風景画はとても静かです。絵の前に立つと、気持ちがおだやかになります。それでいて、はりつめた空気も感じるのです。
案内ポスターにもなっている「水路を来たる」は、暗い中の明るさ、明るさの中の暗さの加減を課題とした画家の代表作ですが、不似合いとも思える赤や緑が見え隠れする不思議な魅力もあります。「当時、厚塗りで描く日展画家が多かったなか、元次は数少ない薄塗りの画家として知られた」という解説文に、なるほどと思いました。「渋さが汚なくならぬように、また、美しさが軽薄にならぬように」とは、元次の言葉です。
向かい風の中のミニスカートの二人の女性(風に往く)、安野光雅が描きそうな(鐘の鳴り響く街)、中国の風景に魅せられる(美しく映ゆ劉家峡)、北野天満宮の(神苑の新雪)など、どの作品も、この大きさで見てほしいと思いました。
スケッチブックの「阿蘇」と「奥入瀬」もよかったな。